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いとうかずこ著・金井久美子絵『ネコのしんのすけ』(人文書院、2002年)

 「しんのすけが、あまりたびたびそこへ行くので、その場所は、いつのまにか、『しんのすけひろば』と、よばれるようになりました。なにしろ、しんのすけは、家にいないなと思うと、たいてい、ここにいましたから」(46頁)

 

「『しんのすけ、おまえが食べるものはなんにもなかったね。チーズを持ってこようか?』

 草太にそういわれても、しんのすけは大きな目をパッチンとやって、とてもゆったりと、そこで、くつろいでいました。その目は『いいの。いい気持ち』と言っているようでした」(101頁)

 

 

「『しんのすけ、いいね。角をまがると、すぐ、ごはんで』と、草太が声をかけましたが、食べるのにいそがしいしんのすけは、ふり向いてもくれませんでした。

 このあと、しんのすけが、まがったまま、朝ご飯を食べているのを見かけると、みんなは、つい、『あ、いいね。“角をまがるとすぐごはん!”』と言って、笑いました」(123頁)

 

かれこれ6年程猫と一緒に暮らしている身としては、しんのすけがワインを飲んで吐いたことを大笑いするエピソードやイワシ団子をあげて喉をつまらせるエピソードは、時代の違いを考慮にいれても信じられないという思いはあるが、それでもしんのすけがこんなに愛らしいネコとして描かれているのは作者の深い愛情に因るのだろう。読んでいるこちらも「ヨシ子おばさん」の視点に同化してしんのすけが自分の猫のように身近に、愛しく感じられる。それもひとえにしんのすけの生前、作者が細やかな愛情でしんのすけを見てきたためと言えるだろう。

とはいうものの、ここまで読者を魅了するのは何と言っても金井久美子の挿絵が猫の魅力をこれ以上ないほど描き出してるからではなかろうか!!!!!猫の柔らかな毛並みやしなやかな体躯やくつろいでいる時の見ているこちらまで夢心地になる表情など写真や肖像画では表しきれない猫の愛らしさを紙と鉛筆でここまで表現するなんて!!!!“角を曲がるとすぐごはん!”の挿絵のしんのすけなんて胸がいっぱいになってしまう。何よりしんのすけのしっぽの魅力はこれまで描かれてきた物語中の猫たちのなかで一等賞にちがいない。

 

猫を飼ったことがある人はもちろん、これまで猫と接する機会がなかった人も猫の虜にする一冊。

 

 

 

ネコのしんのすけ

ネコのしんのすけ